青葉哲郎のマーケティングブログ

日本各地でホテルが開業ラッシュ <その1〜ラグジュアリーホテル編>

サイコスの青葉でございます。

2020年の東京オリンピックまで、あと1年を切りました。開催が迫るとともに、日本各地では新しいホテルが続々と開業しており、オリンピックを控えた東京だけでなく、大阪、京都、沖縄などでも開業が相次いでいます。我がサイコスのオフィスすぐ近くには「パークハイアット東京」があり、私もよく利用するのですが、まもなく京都と北海道にも開業するのだそう。また、ラグジュアリーホテルのみならず、独自路線をいく格安ホテルの開業も目立ちます。

そこで今回は、日本中で止まらないホテルの開業ラッシュについて3回にわけて考察し、第一弾は「ラグジュアリーホテル編」と題して、相次ぐラグジュアリーホテルの開業について考えていきたいと思います。

◆観光市場は、2030年に15兆円?自動車産業より大きくなる可能性も

まずは、日本の観光・ホテル市場について少し見ておきましょう。

政府は、経済政策の1つとして観光業の拡大を盛り込み、訪日外国人観光客数の目標を2020年に4000万人、2030年に6000万人と設定しています。ビザの規制緩和や積極的な海外プロモーション活動の結果、訪日外国人は急増しており、観光市場の拡大とともに、ホテル市場もプラス成長を続けていくものとみられています。

出典:観光庁

最新の調査では、2018年に3119万人の訪日外国人客数を達成しており、政府の目標設定も達成不可能ではないと感じます。本当に2030年に6000万人まで伸びるとすると、世界の観光立国トップ5に入ることになり、世界有数の観光立国になるのも夢ではありません。

しかし、何の問題もないようにみえる日本の観光産業ですが、まだまだ多くの改善が必要ということも事実です。そのひとつが、日本のラグジュアリーホテル事情。訪日外国人富裕層からは、日本のラグジュアリーホテルの圧倒的な少なさに不満を持たれています。Five Star Allianceという有名な「5つ星ホテル」の情報サイトによると、世界139カ国には3236軒の5つ星ホテルがあるのですが、日本国内でこのサイトに登録されている5つ星ホテルはわずか28軒。これはベトナムの26軒を少し上回る程度です。ちなみに、アメリカにはなんと755軒の5つ星ホテルがあるのですが、これは全世界の5つ星ホテルの23.3%を占め、断トツの世界一を誇っています。

◆「パークハイアット」が京都と北海道に

ラグジュアリーホテルの開業が急務と思われる日本ですが、我が社のご近所「パークハイアット」が、2019年10月に京都、2020年1月に北海道ニセコに、新しく開業します。

出典:パークハイアット京都(外観イメージ)

出典:パークハイアットニセコHANAZONO(外観イメージ)

「パークハイアット京都」は京都・東山三十六峰を背に、世界遺産の清水寺に続く二寧坂に面したロケーションで、創業142年目を迎える料亭「山荘 京大和」の敷地内に立地しています。敷地内からは京都市街と八坂の塔を同時に眺望でき、周囲の景観に合わせた低層建築を設計するとのこと。また、敷地内にある最も古い建造物で江戸時代から続く茶室「送陽亭」などの既存の歴史的建造物7室と日本庭園は、そのまま保存・復元するそうです。

また、「日本で最も国際的なリゾート」といわれる北海道ニセコにも、来冬にオープン予定。「パークハイアットニセコHANAZONO」では、北海道の大地と海が育む新鮮な食材を使って美食も追求するのだとか。館内のレストランは、中国料理、炉端焼、鉄板焼、イタリア料理、ラウンジ、バーのほか、ミシュラン星付きシェフによる寿司とフランス料理も予定されており、充実のラインナップで多彩な食の魅力を提案します。

京都でも、北海道ニセコでも、それぞれの土地の良さを最大限に生かしたサービスが期待できるでしょう。

◆「ブルガリホテル」は2022年、東京に開業

パークハイアットに留まらず、その他の外資系ラグジュアリーホテルの開業も進んでいます。東京駅前に開発予定の超高層複合ビル内に、日本初となるブルガリホテルを開業することが決定しました。この新たなホテルは、「ブルガリホテル東京」として2022年末に開業する予定です。

出典:ブルガリホテル東京 (完成イメージ)

インテリアデザインは、各国のブルガリホテルと同じアントニオ・チッテリオが担当します。「東京にイタリアの現代的な建築を持ち込む。一般的なラグジュアリーホテルはホテル用の家具を入れるだろうが、われわれはイタリアンブランドの家具などをも取り入れる」と言っています。一方で、東京だけのデザインとして、メイド・イン・ジャパンや日本風のデザインでも差別化します。

出典:ブルガリホテルミラノ

ブルガリホテルは、すでにミラノ、ロンドン、バリ、北京、上海、ドバイで展開しており、今後は、2020年にモスクワ、パリにオープンする予定。「ブルガリホテル東京」は9軒目となり、日本での開業は初となります。

◆新オークラ、旧本館のロビーを再現。価格は国際水準に

国内系ホテルでも、国際水準に迫る動きが見られます。2019年9月、ホテルオークラは本館を約4年かけて建て替えた「The Okura Tokyo」(オークラ東京)を開業しました。今回のリニューアルに際して2つのブランドを設け、新設の「ヘリテージ」は平均客室単価が7万円で、旧本館の3.5倍に及びます。もうひとつの高級ブランド「プレステージ」でも、2.5倍の約5万円に設定しています。

出典:オークラ東京 客室「ヘリテージスイート」

いずれの価格も東京都内では最高水準。帝国ホテル東京の3万9500円を大きく上回ります。これは「国内に進出している外資系の高級ホテルとほぼ並ぶ」とのこと。

また、「日本モダニズム建築の最高傑作」とされ、建て替え決定後に国内外から存続の署名が寄せられた旧本館のメインロビーを、改装後のロビーに再現しています。オークラを象徴するつり下げ式の照明「オークラ・ランターン」や、満開の花に見立てた「梅の花のテーブルと椅子」も配置しています。

出典:オークラ東京

国内外から愛されたこの旧本館ロビーは、建築家の故・谷口吉郎氏が設計委員長を務め、日本の伝統的な美術や文化を生かす意匠を取り入れました。今回の建て替えは、長男で建築家の吉生氏が担当し、親子二代によって引き継がれています。

◆まとめ

訪日外国人の増加を受け、とくに都内は外資系ラグジュアリーホテルの開業ラッシュとなっています。パークハイアットやブルガリホテルに留まらず、世界最大手の米マリオット・インターナショナルは2020年に、最高級ブランド「エディション」を虎ノ門に開く予定。ただ、それでも国際的にみれば、富裕層を取り込む余地はまだまだあると思います。

また、国内のホテルの価格は大きくみて二極化する流れにあります。オークラ東京に代表される高級化の路線が目立つ一方、ビジネスホテルより安い市場も広がっています。それは米エアビーアンドビーが先行して開拓してきた民泊の市場だけではありません。インドの格安ホテル最大手「オヨホテル(OYO Hotels & Homes)」も日本に進出し、ホテル事業の展開に取り組んでいます。今後、益々安いサービスの競争が進み、価格帯が広がっていくことが予想されるでしょう。

今回は、日本各地で開業を続ける「ラグジュアリーホテル」について取り上げました。第二弾は「新興勢力『コト消費』ホテル編」と題し、インバウンドの新たな消費傾向「コト消費」に対応するユニークなホテルを中心に、迫っていきたいと思います。

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